Japan Society of Next Generation Sensor Technology

センサ雑感

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本コーナーは、センサ・アクチュエータ・マイクロマシンに直接、間接に関するエッセイ、提案、意見などを掲載する会員に開放された欄です。論文、展望などのいわゆる硬い文は会誌に掲載させて頂きますが、本コーナーは読者が気軽に読め、投稿できる欄ですので、積極的なご投稿を期待します。
3〜6ヶ月掲載する予定です。

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チョウの道
                                                                                            調査委員 樋口 行平

 毎年初夏になると我が家の猫の額のような庭にもアゲハチョウがひらひらと飛来し,目を楽しませてくれる。もう20年以上も前になるが,妻が娘にチョウの羽化を見せるんだと言ってミカンの苗木を植えたのが始まりである。私は,高々数本の木でチョウを呼び寄せられるとは期待していなかった。ところが不思議なことにすぐにアゲハチョウが飛来しだした。そして最近はカラスアゲハを初めいろいろな種類のアゲハチョウが飛んできている。

 毎年,みかんの木に卵を産みつけ,数匹のさなぎになる。妻はそれを枝ごと切り取り虫かごに入れ,羽化を待つのである。しかし,羽化を目で見ることはなかなか困難で,気がつくと既にチョウになっていたりする。ある朝,妻の「羽化が始まるよ」と言う声で娘と一緒に飛んでいくと,さなぎの表面に裂け目ができ,朝顔の花のつぼみのように丸くたたまれた羽が外に出てきた。しばらくじっとしていて,やがておもむろに羽を広げゆっくりと羽ばたき,その間も羽は少しずつ大きくなっていく様子はなかなか感動的である。

 チョウの前足には感覚毛という感覚器があり,特にメスの感覚毛はオスのそれよりも長く,この感覚毛で幼虫が好む葉を識別するとのことである。前足で葉を触りながら,幼虫に対する毒素を持っていないかどうかを判断する味覚器官である。しかし,遠く離れたところに植わっている自分の好きな木をどのように見つけるのだろうか?やはり匂いで探すような気がするのだが,実際のところはよくわからず,視覚も使っているらしい(但し,チョウは近眼でせいぜい1.5m程度の範囲しか認識できないとのことである)。嗅覚と言うと性フェロモンの話が有名で,ある種の蛾では1ppm程度の匂いも触角にある嗅覚細胞で感知できるとのことである。フェロモンに対する高感度でシャープな嗅覚は,オスとメスが出会う確立を高めるのに必要であるが,幼虫が育つ環境を探し出す感覚もチョウにとっては非常に重要で,同じくらい高感度に磨かれていると想像するに難くない。アゲハチョウが食草であるミカンや山椒の木をまず匂いで見つけるのではないかという想像も,あながち間違っていないように思う。ただ不思議に思えるのは,フェロモンに対する感覚もミカンや山椒の木に対する感覚も嗅覚細胞によるものだと考えた場合,前者は非常にシャープであるのに対し,後者はその感度にかなり広がりがある点である。この違いは嗅覚細胞そのものの違いなのかあるいは情報処理の違いによるものなのだろうか?

 つい先日の新聞記事によると,東京都品川区で「チョウの道プロジェクト」が始まったとのことである。チョウの食草花壇を多数設け,品川区全域にチョウの飛ぶ道を張り巡らせようという試みで,チョウにも人間にも心温まるプレゼントになりそうである。

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