Japan Society of Next Generation Sensor Technology
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| 会誌『次世代センサ』 巻頭言転載 |
本コーナーは、センサ・アクチュエータ・マイクロマシンに直接、間接に関するエッセイ、提案、意見などを掲載す
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本コーナーは、年2回発行される会誌『次世代センサ』の巻頭言を転載したものです。 |
東日本大震災にあたって
東北大学 教 授 江刺 正喜
3月11日に宮城県沖で発生した大地震による東日本大震災は、津波や原発事故など大惨事を引き起こしました。私の所属する東北大学も大きな被害を受け、元気・前向き(Powerful Positive)を合言葉に復興に努めておりますが、被災された方々にも是非とも元気・前向きでがんばって頂きたいと思います。
震源に近い仙台市での自分や周りの経験をご紹介したいと思います。14時46分頃研究室で早期警戒警報によるカウントダウンが鳴り、ほぼ正確に大きなゆれが起きました。20秒程度続いて収まった頃に、外の決められた避難場所に集合し、全員が居ることを確認した後、帰宅しました。
我が家では幸い家具やテレビなどが壊れた程度で家族に怪我なども有りませんでしたが、近くではかなりの建物が被害を受け、その後取り壊したりしております。3日後位に電気が普及しましたが、水道の復旧には1ケ月程、また都市ガスの普及には1ケ月半程度かかりました。トイレの水は流さないでおいた風呂の水を、また都市ガスの代わりに携帯用ボンベのガスコンロなどを利用しました。震災の次の日は自宅や市内にある実家の片付けをして、3日目に大学の研究室に行き、工学部の他の建物が使えなくなっているなどの状況を把握しました。4日目からは復旧作業に入りましたが、自分の車は研究室の田中准教授に使ってもらい、研究室および「マイクロ・ナノマシニング研究教育センター」の復旧作業をやってもらいました。私は近くに住んでいる戸津准教授に送り迎えしてもらって「西澤記念研究センター」の片付けをすることにしました。この作業には2ヶ月を要しましたが、来客や出張が全てキャンセルされてまとまった時間ができたので、私には片付けの絶好のチャンスになり、運動不足も解消されて5kgも痩せることができました。
「西澤記念研究センター」は2年前に(財)半導体研究振興会が解散し、その土地と建物を東北大学に寄付したもので、西澤潤一先生が半世紀にわたって日本の半導体産業を支えてきた場所です。これを片付けて2,200m2の空きスペースを確保し、被災した建物の研究室を収容することになりました。
我々の研究室以外からも、職員や学生がしだいに増えて片付け作業が行われました。本国からの退避要請にも関わらず残留し、あるいは家族だけを帰国させて、復旧に協力してくれた外国人も多くおります。また、東京の大学の先生が食料を積んだ車で復旧に来てくれて、車に泊まりながら2週間以上も復旧を手伝っていただきました。このような共同作業で伝えられる知識も多く、またそれで強まった連帯感は貴重だと思います。経費がかからないように装置は解体してウィンチで下ろし、また真空ポンプや部品などを再利用できるように整理し使ってもらっています。ガリウム砒素関係の装置で必要なものは除染処理の工場に送っています。この建物には1800m2のスーパークリーンルームが在り、以前パワートランジスタの生産に使われておりました。これにMEMS設備を加えて整備し、4/6インチのプロセスができる「試作コインランドリ」http://130.34.94.150/coin/index.htmとして会社から来て使って頂いております。2ヶ月で復旧して5月には再開し、今は以前より多い毎月100件程度使用して頂いております。
今回地震自体による被害が比較的少なかったのは備えのためだと思います。神戸大震災の教訓で建築基準が変わり、鉄骨による新しい建物などは破壊されず、特に免振構造のマンションなどでは内部の家具なども被害を免れています。しかし土地が沈んで、家屋が破壊したり危険にさらされたりはしています。
JRの早期地震検知システム(Early
Earthquake Detection and Alarm System (EEDAS))によって東北新幹線は脱線を回避することができ、また気象庁の津波警報システムが津波からの避難に役立ったことは言うまでもありません。
私どものMEMS試作実験室では、自作の設備を中心にして20mm角のシリコンウェハのプロセスを行っています。自作の機器は軽いので地震で破壊されにくく、すぐ直して復旧させることができました。これに対して市販の大きな設備は、修理費用が大きいだけでなく新幹線が止まっていた1ケ月半ほどは修理に来てもらえませんでした。私どもの手作りの設備では、プロセス全体の経験をしてもらえることや自由度が高いだけでなく、災害にロバストなことも自慢です。製造設備が過度に集中し、サプライチェーンが途切れることが問題になりましたが、これを教訓に分散してロバスト化が進むことになるでしょう。家庭でもお風呂の水は流さずにおくような知恵でロバスト化できます。ロバストにしながら、新たな発展の機会になるように皆でしたいと思います。